Market evolution: 飼料および食品残渣 (CN 23) — 2015–2025
はじめに
CN 23 は「食品工業の残渣および廃棄物;調製飼料」を涵盖する統計見出しであり、大豆油粕(CN 2304)やその他の植物性油粕(CN 2306)、調製飼料(CN 2309)、デンプン製造残渣・ビートパルプ(CN 2303)、麦ふすま(CN 2302)、肉粉・魚粉(CN 2301)など多様な品目を内包する 概要ダッシュボード。本レポートは、2015年から2025年までのEU域外との貿易動向を、貿易収支の改善、取引パートナーの構造変化、品目別価格と数量の変動の3つの軸から分析する。期間を通じてEUの輸出は急拡大し、純輸入依存度は大幅に低下した。2022年の商品価格ショックとロシアからの輸入消滅は、供給源の多角化とEU内生産拡大を加速させる転機となった。
1. 輸出主導の貿易赤字縮小:EUの自立化が進行した10年間
輸出額は約7割増加し赤字を大幅に圧縮
2015年のEU域外向け輸出額は約58億ユーロであったが、2025年には約99億ユーロに達し、+71.6%の増加となった。一方、輸入額は約105億ユーロから約119億ユーロへと12.5%の増加にとどまった。その結果、貿易赤字は約47億ユーロ(2015年)から約19億ユーロ(2025年)へと縮小し、改善率は59.7%に及んだ。
| 指標 | 2015年 | 2025年 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 輸出額(百万EUR) | 5,796 | 9,945 | +71.6% |
| 輸入額(百万EUR) | 10,545 | 11,860 | +12.5% |
| 貿易収支(百万EUR) | -4,749 | -1,915 | +59.7% |
単価の上昇が輸出額拡大をけん引
輸出数量は8.1百万トンから9.3百万トンへと14.6%の増加にすぎなかったが、輸出単価はトンあたり715ユーロから1,070ユーロへと49.7%上昇した。すなわち、輸出額増加の大部分は数量拡大ではなく価格上昇に起因する。一方、輸入数量は28.9百万トンから31.1百万トン(+7.4%)、輸入単価は364ユーロ/tから382ユーロ/t(+4.7%)と、輸入サイドでは価格上昇の影響は相対的に限定的であった。
純輸入依存度は半減し、域内生産が急速に拡大
純輸入依存度(net import reliance)は2015年の14.7%から2025年には6.5%へと55.3%低下した 脆弱性:純輸入依存度。これはEU域内のCN 23生産が量ベースで+109.8%(約1,089億kg→2,284億kg)、金額ベースで+272.8%(約234億ユーロ→874億ユーロ)と爆発的に拡大したことを反映している 生産量の推移。同時に、域外への輸出傾向(export propensity)は4.5%から6.7%へと46.9%上昇し、EU産品の国際競争力が高まったことが示唆される 輸出傾向。
2. 供給源の再編と地政学的ショック:パートナー構造の劇的変化
ブラジル・アルゼンチンが輸入の2大供給源だが相対比重は変動
2025年時点で、EUのCN 23輸入の最大供給国はブラジル(約36億ユーロ、+19.5%)であり、アルゼンチン(約26億ユーロ、-13.6%)がこれに続く。この2か国で輸入総額の半分以上を占める パートナー別輸入。
| 輸入相手国 | 2015年(百万EUR) | 2025年(百万EUR) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブラジル | 3,013 | 3,601 | +19.5% |
| アルゼンチン | 3,003 | 2,595 | -13.6% |
| ウクライナ | 462 | 805 | +74.3% |
| ロシア連邦 | 417 | 25 | -94.0% |
| 米国 | 759 | 447 | -41.1% |
| インドネシア | 181 | 197 | +8.7% |
| 英国 | 792 | 873 | +10.2% |
ロシアからの輸入は事実上消滅
2015年に約4.2億ユーロであったロシアからの輸入は、2025年には約2,500万ユーロへと94.0%の激減となった。これは2022年のロシアによるウクライナ侵攻に伴うEU制裁措置の直接的な影響とみられる。ロシアの輸入における変動係数(CV)は0.36と主要パートナーの中で高い水準にあり、構造的な不安定性を示していた ボラティリティ分析。ロシアからの輸入減少分は、ウクライナ(+74.3%)やブラジルからの増加で補填された可能性が高い。
輸出先は英国が圧倒的首位、スイス・ノルウェイ・トルコが急成長
EUのCN 23輸出先として、英国が約23億ユーロ(+47.3%)と群を抜く最大市場である。これにノルウェー(+97.4%)、スイス(+111.1%)、トルコ(+105.4%)が続き、いずれも10年間で2倍前後の急成長を遂げた。
| 輸出相手国 | 2015年(百万EUR) | 2025年(百万EUR) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 英国 | 1,544 | 2,275 | +47.3% |
| ノルウェー | 366 | 722 | +97.4% |
| スイス | 275 | 581 | +111.1% |
| トルコ | 213 | 438 | +105.4% |
| ベトナム | 141 | 155 | +9.8% |
| イスラエル | 100 | 218 | +117.4% |
| タイ | 167 | 195 | +16.7% |
輸出の集中度は低下、輸入集中度(価値)も低下傾向
輸入のHHI(価値ベース)は1,820から1,597へと-12.3%低下し、供給源の多角化が進行した。ただし、数量ベースのHHIは1,894から2,207へと+16.5%上昇しており、少数の大量供給国への数量依存が逆に強まったことを示す。輸出のHHI(価値ベース)は926から737へと-20.4%低下し、輸出先の分散化がより顕著であった 集中度分析。
3. 品目別ダイナミクス:大豆油粕の数量優勢と調製飼料の価値優勢
輸入は大豆油粕(CN 2304)が量・額ともに圧倒
EUのCN 23輸入の最大品目は大豆油粕(CN 2304)であり、2025年には約2,086万トン(約69億ユーロ)と、輸入数量の約3分の2を占める。2015年の1,828万トンから14.1%増加し、価格は378ユーロ/t(2015年)→332ユーロ/t(2025年)とむしろ低下傾向にある。2022年には一時522ユーロ/tまで急騰し、世界的な商品価格高騰の影響を受けた。
| 品目 | 2015年 数量(万t) | 2025年 数量(万t) | 2015年 価格(EUR/t) | 2025年 価格(EUR/t) |
|---|---|---|---|---|
| CN 2304(大豆油粕) | 1,828 | 2,086 | 378 | 332 |
| CN 2306(その他植物油粕) | 561 | 490 | 183 | 199 |
| CN 2309(調製飼料) | 139 | 172 | 1,061 | 1,573 |
| CN 2303(デンプン残渣等) | 154 | 171 | 162 | 221 |
| CN 2301(肉粉・魚粉) | 39 | 41 | 1,025 | 1,232 |
| CN 2302(麦ふすま等) | 14 | 36 | 219 | 212 |
輸出は調製飼料(CN 2309)が高付加価値セクターとして独走
輸出面では、調製飼料(CN 2309)が約448万トン・約81億ユーロと、輸出額全体の約81%を占める圧倒的な主力品目である。輸出単価は1,188ユーロ/t(2015年)から1,802ユーロ/t(2025年)へと51.7%上昇し、高付加価値化が進んだ。対照的に、大豆油粕の輸出は93万トンから48万トンへと半減しており、EUは大豆油粕を域内消費に振り向け、代わりに調製飼料を輸出する構造に変化したとみられる。
| 品目 | 2015年 数量(万t) | 2025年 数量(万t) | 2015年 価格(EUR/t) | 2025年 価格(EUR/t) |
|---|---|---|---|---|
| CN 2309(調製飼料) | 340 | 448 | 1,188 | 1,802 |
| CN 2306(その他植物油粕) | 127 | 146 | 217 | 274 |
| CN 2301(肉粉・魚粉) | 104 | 146 | 642 | 592 |
| CN 2303(デンプン残渣等) | 90 | 74 | 270 | 290 |
| CN 2304(大豆油粕) | 93 | 48 | 444 | 421 |
| CN 2302(麦ふすま等) | 42 | 55 | 170 | 249 |
2021–2022年の世界的価格ショックが全品目に波及
2021年から2022年にかけて、CN 23のほぼ全ての品目で輸入・輸出単価が急騰した。顕著な例として、CN 2309(調製飼料)の輸入単価は1,055ユーロ/t(2019年)→1,516ユーロ/t(2022年)へと43.7%上昇し、CN 2306(その他植物油粕)の輸入単価は178ユーロ/t→280ユーロ/t(+57.3%)となった。これはウクライナ紛争に伴う穀物・油脂市場の混乱、COVID-19後の供給チェーン混乱、エネルギー価格高騰が複合的に影響したものと考えられる。2023年以降、大部分の品目で価格は調整局面に入っている。
EU域内の比較優位は中東欧諸国に集中
2025年の特殊化指数(RSCA)によれば、CN 23のEU域内での比較優位が最も高いのはハンガリー(RSCA 0.330)、ラトビア(0.270)、リトアニア(0.215)、ポーランド(0.202)、デンマーク(0.193)であった。一方、マルタ(-0.999)、ルクセンブルク(-0.685)、アイルランド(-0.652)は最も低い特殊化度を示した 特殊化分析。中東欧諸国の飼料産業の成長は、EU全体の輸出拡大を支える重要な要素であったと推察される。
結論
CN 23(飼料および食品残渣)のEU域外貿易は、2015年から2025年にかけて構造的な転換を遂げた。最大の変化は、EUの貿易赤字が47億ユーロから19億ユーロへと大幅に縮小し、純輸入依存度が14.7%から6.5%へ低下した点である。これは域内生産の量的拡大(+110%)と、調製飼料(CN 2309)を中心とした高付加価値輸出の拡大(輸出単価+50%)に支えられたものである。取引パートナーの面では、2022年の地政学的ショックがロシアからの輸入を事実上消滅させた一方、ブラジル・ウクライナからの調達が増加し、供給源の再編が進んだ。2021–2022年の世界的商品価格高騰は短期的な混乱をもたらしたが、2023年以降は価格調整が進んでおり、市場は新たな均衡に向かっている。中長期的には、EUの飼料産業は域内生産基盤の強化と輸出競争力の向上を通じて、外部依存度をさらに低減させていく可能性がある。