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Market evolution: 特殊織物およびレース (CN 58) — 2015–2025

導入

本報告書は、CN 58(特殊織物、タフティング織物、レース、タペストリー、トリミング、刺繍)に関するEUの域外貿易動向を、2015年から2025年の11年間にわたって分析するものである。この製品群は、ウィーブパイル織物(5801)、狭幅織物(5806)、刺繍(5810)、ネット・レース(5804)、織りラベル(5807)、装飾トリミング(5808)、キルト製品(5811)など、多岐にわたる特殊テキスタイルを含む。分析期間を通じて、EUはこの分野で依然として正味輸出国であるものの、貿易黒字は急速に縮小し、域内生産の縮小と輸入依存度の高まりという構造的変化が鮮明になっている。


1. 純輸出国としての地位の急速な縮小

1.1 貿易黒字の大幅な減少

2015年から2025年にかけて、EUのCN 58製品の対域外貿易黒字は大幅に縮小した。

指標 2015年 2025年 変化率
輸出額 9.29億ユーロ 9.59億ユーロ +3.2%
輸入額 7.71億ユーロ 9.01億ユーロ +16.8%
貿易黒字 1.58億ユーロ 0.58億ユーロ −63.0%

輸出入の総額推移を見ると、輸出は僅かに増加したにとどまるのに対し、輸入は約17%増加しており、黒字幅は11年間で約3分の1にまで縮小した。純輸入依存度は−11.5%(2015年)から−3.4%(2025年)へと70.9%の変化を示し、EUが純輸出国ではあるものの、その優位性が急速に失われつつあることを示唆している。

1.2 数量と単価の逆行する動向

輸出入の数量と価格の推移は、EUのポジション変化をより鮮明に浮かび上がらせる。

指標 2015年 2025年 変化率
輸出数量 54,402 t 47,905 t −11.9%
輸入数量 70,974 t 99,242 t +39.8%
輸出単価 17,085ユーロ/t 20,025ユーロ/t +17.2%
輸入単価 10,868ユーロ/t 9,078ユーロ/t −16.5%

EUの輸出数量は減少傾向にあるが、単価は上昇している。これは、EUが低価格帯の製品から撤退し、高付加価値製品に特化していることを示唆する。一方、輸入は数量が40%近く増加しているにもかかわらず単価は低下しており、量的拡大と価格競争力の強化が同時に進行している。純輸入依存度の推移は、EUが域内需要を域外調達で補う傾向が強まっていることを裏付けている。

1.3 域内生産の顕著な縮小

この貿易動向の背景には、域内生産の大幅な縮小がある。

指標 期間初年 期間末年 変化率
生産量(m²) 2.22億 m² 1.68億 m² −24.4%
生産額 42.77億ユーロ 31.81億ユーロ −25.6%

生産量の推移によれば、域内生産は4分の1近く縮小しており、これが輸入増加の一因となっている。EU域内では、労働集約的なテキスタイル製造業の海外移転が進行し、付加価値の高い特殊製品やデザイン主導の製品への集中が進んでいると解釈できる。


2. サプライチェーンの再編:中国の台頭とパートナー構成の変化

2.1 輸入における中国の圧倒的な存在感拡大

輸入パートナー別推移を見ると、中国の存在感が際立っている。

主要輸入相手国 2015年 2025年 変化率
中国 3.05億ユーロ 4.61億ユーロ +51.0%
トルコ 1.16億ユーロ 1.11億ユーロ −4.6%
インド 0.69億ユーロ 0.92億ユーロ +34.2%
イギリス 1.01億ユーロ 0.62億ユーロ −38.1%
台湾 0.25億ユーロ 0.14億ユーロ −43.7%

中国はEUのCN 58輸入全体の半分以上を占めるまでに拡大し、2015年から2025年にかけて3.05億ユーロから4.61億ユーロへと51%増加した。輸入集中度(HHI)は2,106から2,976へと41.3%上昇しており、輸入先が中国に大きく偏る傾向が強まっていることを示している。

一方、イギリスからの輸入は38.1%減少しており、Brexit後の貿易摩擦や調達先の多様化の影響が示唆される。台湾も43.7%減少しており、アジアにおける生産の再編が起きている可能性がある。インドは34.2%増加と堅調であり、中国に次ぐ代替供給源としての地位を固めつつある。

2.2 輸出における近隣諸国への回帰傾向

輸出パートナー別推移では、地中海沿岸諸国への輸出が顕著に増加している。

主要輸出相手国 2015年 2025年 変化率
イギリス 1.66億ユーロ 1.09億ユーロ −33.9%
モロッコ 0.98億ユーロ 1.12億ユーロ +14.9%
チュニジア 0.67億ユーロ 1.01億ユーロ +49.1%
トルコ 0.55億ユーロ 0.62億ユーロ +12.8%
アメリカ 0.84億ユーロ 0.89億ユーロ +5.8%
中国 0.33億ユーロ 0.43億ユーロ +30.7%

チュニジアへの輸出は49.1%増加と最も高い伸びを示しており、モロッコ、トルコと同様、地中海圏における産業協力の深化を反映している。これらの国々は、EUのテキスタイル・アパレル産業における重要なアウトソーシング先であり、EUからの原反や中間財の輸出が増加していると解釈できる。

イギリスへの輸出は33.9%減少し、輸出集中度のHHIは692から609へと低下し、輸出先の多様化が進んでいる。

2.3 EU域内の輸入・輸出を担う主要国

域内各国の貿易動向を見ると、イタリア、ドイツ、フランスがEU域外貿易の中心である。

輸入(2025年) 輸出(2025年) 特化指数(RSCA)
イタリア 1.72億ユーロ 2.13億ユーロ 0.47(高度に特化)
ドイツ 1.06億ユーロ 2.00億ユーロ
フランス 1.13億ユーロ 1.70億ユーロ 0.17(やや特化)
ポーランド 1.41億ユーロ
スペイン 0.95億ユーロ 0.90億ユーロ

特化分析によれば、ポルトガル(RSCA 0.53)とイタリア(RSCA 0.47)がCN 58製品の域内生産・輸出において最も高い特化度を示している。一方、ポーランドの輸入が8,214万ユーロから1.41億ユーロへと71.4%増加しており、中東欧における加工拠点としての成長が注目される。


3. 製品セグメント別に見る構造変化

3.1 輸入におけるパイル織物の爆発的増加

製品別輸入数量の推移を見ると、セグメントごとに非常に異なる動向が見られる。

CNコード 製品名 輸入数量(2015年) 輸入数量(2025年) 変化率
5801 パイル織物・シュニール織物 23,529 t 47,067 t +100.0%
5806 狭幅織物 27,479 t 32,220 t +17.2%
5804 トール・ネット・レース 5,705 t 3,804 t −33.3%
5810 刺繍 4,620 t 5,592 t +21.0%
5808 組ひも・トリミング 2,029 t 3,401 t +67.6%
5807 織りラベル・バッジ 2,789 t 1,490 t −46.6%
5811 キルト製品 1,093 t 1,814 t +66.0%

注目すべきは、5801(パイル織物およびシュニール織物)の輸入が数量で2倍に増加し、2015年の23,529 tから2025年の47,067 tに達していることである。輸入金額でも1.81億ユーロから2.73億ユーロへと51%増加しており、これは中国からの大量輸入と関連している可能性が高い。

一方、5804(トール・ネット・レース)の輸入は33.3%減少しており、5807(織りラベル・バッジ)も46.6%減少している。これらは、デジタル化やスマートラベルの普及、ファッション産業のトレンド変化の影響を受けている可能性がある。

3.2 輸出における高付加価値化とセグメント別競争力

CNコード 製品名 輸出数量(2015年) 輸出数量(2025年) 輸出単価変化
5806 狭幅織物 22,795 t 24,317 t +24.9%
5801 パイル織物 17,801 t 12,381 t +31.0%
5807 織りラベル 4,909 t 2,660 t +74.0%
5808 組ひも・トリミング 1,799 t 1,343 t +31.1%
5804 トール・レース 1,910 t 780 t +23.5%

製品別輸出において、EUは数量こそ減少させるものの、すべての主要セグメントで単価を上昇させている。特に5807(織りラベル)の輸出単価は74%上昇し、23,726ユーロ/tから41,336ユーロ/tに達している。これは、技術的に高度なブランドラベルや特殊仕様のラベルにEUの競争力が集中していることを示唆する。

狭幅織物(5806)はEUの最大輸出セグメントであり、2025年の輸出額は3.68億ユーロに達している。単価も12,113ユーロ/tから15,126ユーロ/tへと上昇しており、高品質・高機能製品へのシフトが進んでいる。

3.3 ボラティリティと供給ショック

価格変動係数(CV)を見ると、特定の取引相手との間で高い変動が観察される。

パートナー CV(輸入) CV(輸出)
イギリス 0.50 0.22
ロシア 0.53
中国 0.23 0.22
フィリピン 0.39
ノルウェー 0.06

イギリスの輸入CVが0.50と突出して高いことは、Brexit後の貿易環境の不安定性を反映している可能性がある。ロシアの輸出CV 0.53も、2022年以降の地政学的状況を反映していると推測される。

供給ショックの検出では、以下の主要なショックイベントが確認された:

パートナー ショック種別 年度 異常度 価格変動 シェア
モロッコ 価格 2021年 56.1 −54.4% 13.4%
アメリカ 価格 2023年 28.5 +30.5% 12.7%
ウクライナ 価格 2018年 21.8 −11.9% 4.5%

モロッコへの輸出における2021年の価格ショック(異常度56.1、価格変動−54.4%)は、COVID-19パンデミック後の需要変動と関連している可能性が高い。2021年はEUの輸出全体が回復期にあったが、モロッコへの単価が急落しており、量の回復を価格面で補完した形跡がある。


結論

2015年から2025年にかけて、EUのCN 58市場は構造的な転換期を迎えた。第一に、EUは純輸出国としての地位を維持しているものの、貿易黒字は63%縮小し、域内生産も約4分の1減少している。第二に、輸入は中国に大きく依存する形で40%増加し、集中度(HHI)は41%上昇した。一方で輸出は地中海圏への展開を強化し、高付加価値化を進めている。第三に、製品別にはパイル織物の輸入が倍増する一方、レースやラベルの輸入は減少しており、セグメントごとに異なるダイナミクスが見られる。

これらの動向は、EUのテキスタイル産業が、大量生産型の中間財から高品質・高機能製品へのシフトを進めると同時に、域外からの安価な供給への依存度を高めていることを示している。今後、EUはサプライチェーンの多様化(特に中国依存の軽減)と、地中海圏を中心とした近隣諸国との産業協力の深化という二つの戦略的課題に直面するだろう。

Generated on 2026-08-07. Figures reflect Eurostat data at generation time and do not include later revisions.

Auto-generated: this report is meant to accelerate, but not to replace, human analysis.

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